<株式会社ペンコム 増田社長>

インターネットが一般家庭に普及する前から兵庫県明石市でネットを使った活動を行ってきた株式会社ペンコム社長の増田さん。"いちばん先頭を走り続けたい"と積極的に行動する増田さんに、その仕事の仕方や「女性向けの自己啓発書」へのこだわりについて伺いました。

増田幸美(ますだ・ゆきみ)
企業で広報担当として勤務し結婚・出産退職。阪神淡路大震災での被災をきっかけにフリーペーパーの編集者に。2008年に編集プロダクションとして独立し、同時に「PTA・自治会広報紙できらり!プロジェクト」を開始。新聞社主催Webガイドやセミナーで広報担当者を支援。2010年に株式会社ペンコムを設立。明石市にひとつの出版社として文字文化を発信し続けている。
http://pencom.co.jp/

──もともとインプレスはご存じでしたか?

はい。憧れの先生のような存在でした!
きっかけは1995年1月17日の阪神・淡路大震災にさかのぼります。
このとき日本の標準時を刻む明石天文科学館の大時計が止まったのですが、その写真などが世界中に発信され、これがきっかけで海外からレスキュー隊が被災地に派遣されることになりました。当時はまだインターネット回線は研究機関など一部にしか普及していませんでしたが、郵政省(現:総務省)の施設が明石にあったこともあり、日本国内外に被災した大時計の写真が発信されることになったのです。インターネットを通じたこれらの展開と影響力は、当時、家庭で子育てに追われていた私にとってまさに"情報革命"でした。
すぐに地元のフリーペーパー社に入社し、同時にインターネットでまちづくりに貢献活動を展開するNPOを立ち上げました。以来、ネットの進展に合わせさまざまな取り組みを行い、地域情報化に寄与してきたという自負があります。明石でもっとも早くYahoo!検索にホームページを登録していたんですよ。
こういう活動を行ってきましたから、当時からインターネットの普及を目指したインプレスさんの書籍や取り組みは、私たちNPOメンバーにとってなくてはならない存在でした。

──インプレスと提携してみた感想をお聞かせください。

とにかく「スピーディー」ですよね。どの会社も規模が大きくなればなるほどスピード感が失われていくものだと思っていましたが、インプレスさんは大企業の出版社なのに違いました。実際、弊社から提携のご相談をしてから最初の書籍が出るまで、たったの5カ月しかかかりませんでした。
しかも、決定が速いだけでなく出版業界への影響力もあり、また電子出版など最先端の分野へのチャレンジも積極的です。感動することばかりで、もう社内に住みたいくらいです(笑)。インプレスさんとお付き合いしていると、"出版業界ってみんなこんなにスピーディーなのかな"って思ってしまうのですが、実際はそうではないですよね。

──そのようにしてインプレスと提携して出した1冊目の本である、「才能を伸ばす人が使っているコミュニケーション術」について聞かせてください。

「コミュニケーション次第で人生が変わる」という著者のメッセージを込めました。書店で本を購入して、近くの喫茶店に入ってさっと読んで、すぐに実践できるという、読みやすさ、わかりやすさ、気軽さが特徴です。
著者の栗栖さんはもともと女性の再就職等を支援する会社にいた方です。1万人以上の女性と接してきた経験があり、女性の心理もよく把握しています。その後ビジネスコーチとして活躍していて、セミナーは年間150回以上にも及んでいます。対象も、経営者、管理職、新入社員、教員、学生、介護関係、親子向けと幅広く、京都府の女子駅伝チームのメンタルコーチも担当しています。

──今年1月の全国女子駅伝で優勝したチームですね。

そうです。全国女子駅伝は、中学生から社会人までがたすきをつないで走ります。そのため、年齢はもちろん、受けてきた指導も経験も異なる選手が混在していますので、チームをまとめ勝てるチームにするために、監督が何をすべきかが難しいそうです。しかもこの駅伝は、日本を代表する選手と同じチームで走り学ぶことで、世界に羽ばたく選手を育てるという教育的な意味合いもあるんですね。この本の中では、駅伝には直接触れてはいませんが、どのような方法で互いの信頼関係を作り、相手のあるいは自分の才能を伸ばしていくかという点について、いろいろな事例を交えながら、分かりやすく書かれています。ぜひ、ひとつでもいいので内容を試して欲しいです。


──今後どのような本を発行していくのでしょうか?

本を読んだ方が文章からひとつのことでもいいので、「幸せになれる何か」を見つけてもらえるような本を送り出していきたいですね。その上で私がやりたいことはふたつです。ひとつは、地方在住の著者さんと共に本をつくって世に出していく姿勢を大事に続けていくこと。インプレスさんのパートナー出版社としてスタートする際に新聞取材を受け、"いい本を地方から"という見出しで紹介してもらいました。情報が東京に一極集中している今だからこそ、地方からの発信もがんばらないと。「明石におもしろい出版社があるね」と思ってもらいたいです。
ふたつ目は、"女性"というテーマに積極的に取り組んでいくという点。女性著者による女性向けの自己啓発本・ビジネス本をしっかりとつくっていきたいですね。

──女性向けの本にこだわる理由は何でしょうか?

自分が読みたい本を作りたいんです。女性向けのビジネス書です。これを他の出版社さんにお話しすると「女性って書籍を買わないよね」と言われてしまう。確かにそうかもしれません。結婚すれば、お金の使い道は、子どもの養育費や家族のためであって、自分の教養を高める書籍の購入は優先順位がかなり低くなりますね。
ところが私は、否定されると俄然やる気が出てしまう性格で、「じゃあ、やりましょう」と。
売れないから書籍を出さないとなると、そこに情報が集まらない。同時に発信者、つまり著者も育ちにくい。購買力のあるところに情報や、知恵・知識、権力が集まるのですから。
こう考えていくと、ビジネスへの女性参画がなかなか進まない要因のひとつに、「女性って書籍を買わないよね」もあるのではないかと。
ここで出版社として何ができるかを考えると、「自己啓発本を出す→女性の意識が変わる→社会に出る→自分で稼ぎ出す→女性の新たなマーケットができる」という仕組みを推し進めて、女性の社会進出を応援することかなと思っています。
とはいえ今言いたいのは、「女性たちよ、女子会を1回減らして本を買おう」ですね。

──これからどのように仕事をしていきたいですか?

弊社のような会社がひとつ立ち上がったことによって、私の周囲にいる人たちが、新たな展開につながると期待を寄せてくれています。地方に出版社ができるということは、そこに文化拠点ができるということ。つまり、まちづくりの"装置"がひとつできるということだと思っています。
まちづくりのキーワードは「巻き込む」です。ひとりではできないことも、多くの人と一緒に行動することで大きな力となります。今取り組もうとしているのは、「まちなか読書会」です。学校や書店、地域の文庫活動、公民館など、あらゆるところで子どもから高齢者まで異世代が集って本をツールに語り合っている、そんなイメージです。素敵でしょ。本好きな人の裾野を広げていくんです。具体的には夏頃から「本」に関心のある大勢の人たちとともに取り組んでいきます。

明石には今まで出版社という拠点がなかったのすが、今後は弊社を使って、さまざまなビジネスや活動が広がってくれればうれしいです。そのためにはインプレスさんのバックアップが必要ですので、とても期待しています。周りの人には「私=インプレスさんだと思ってください。インプレスさんが明石のまちづくりに間接的に貢献してくれるのだと思ってください」と話しているんです(笑)。
これからの展開にとてもわくわくしています。

取材日:2014年1月15日
取材・文・撮影=インプレスコミュニケーションズ・デジタル事業本部

増田社長の一冊

PTA・自治会広報誌ラクラク作成ハンドブック」著者:増田ゆきみ

初版は2009年12月。私がはじめて書いた本です。「ある日、突然にくじ引きで広報部員になってしまったPTA役員さんのため」に、少しでも気楽に広報誌作りができるようにと、編集テクニックを分かりやすく紹介しました。現在も読まれていて役員改選の時期になると「生協部門」1位になります。
この本を書いた当時は編集プロダクションを立ちあげたばかりで、出版したいという方の企画書を東京の出版社さんに送っては断られて疲れ果てていたんです。弱音を吐いていたら、ある女性社長さんから「あなた、東京に何社の出版社があると思っているの。片っ端から訪問して熱意を伝えなさい!」と活を入れられまして。これはその言葉を忠実に実践して発行に至った1冊なんです。その後、私はPTA・自治会広報関連の本は2冊出しているので、著者さんの気持ちもよく理解できるんです。
編プロ時代の経験があるから今がある。思い出深い1冊です。